毎日のように食卓に並ぶ鯖缶。でも「日本で最初の鯖缶はいつ作られたのか」と聞かれたら、すぐに答えられる人はほとんどいないはず。調べてみると、その起源には明治政府の国策と、ふたつの戦争の影がありました。知れば知るほど、鯖缶って面白いんです。
日本初の缶詰は鮭だった
日本に缶詰の技術が伝わったのは1871年(明治4年)。長崎でオイルサーディン(鰯の油漬け)の試作が行われたのが始まりとされています。※1
その後、明治政府は食料の国産化・備蓄を急ぎ、北海道開拓使がアメリカから缶詰技術者を招聘。1877年(明治10年)には北海道の石狩川沿いで鮭の缶詰量産が始まりました。鮭が最初だったのは、北海道で豊富に獲れて腐りやすかったから——缶詰の「長期保存」という強みと完璧に噛み合っていたんですね。※1
鯖缶の誕生は、軍の需要から
鯖が本格的に缶詰になったのは1890年代のことです。日清戦争(1894年)・日露戦争(1904年)を前に、軍の携行食・保存食の需要が急増したことが大きな契機でした。※2
三陸沖で豊富に漁獲されるマサバは原料として理想的。現在も缶詰工場が岩手・宮城・青森に集中しているのは、その頃から続く地理的な必然なんです。「軍が作らせた食品が庶民の定番になった」という意味では、缶詰はカレーやコロッケと同じ歴史を歩んでいます。※2
缶詰産業 年表
100円から250円へ——値上がりの実態
戦後の高度経済成長期、鯖缶は「安くて栄養がある庶民の味方」として全国の食卓に定着しました。長い間、1缶100円を切る価格で手に入ることも珍しくなかったんです。
ところが2010年代以降、状況が変わります。不漁・物流コスト上昇・円安という三重苦が重なり、主要銘柄の実売価格は静かに上昇。2026年現在、かつて100円以下だった銘柄が200〜250円台で売られているケースも出てきています。※3
150年前、戦時の保存食として生まれた鯖缶が、今また新たな局面を迎えている。このサイトが価格を定点観測し続けるのは、その変化を見逃さないためです。
出典・参考
- ※1. 日本缶詰びん詰レトルト食品協会「缶詰・びん詰・レトルト食品について」
- ※2. 日本製缶協会「缶詰・製缶業界のあゆみ」
- ※3. 鯖缶インデックス 実売価格観測データ(2020〜2026年)